Virgin Mary
「あー……」
「なんだそのオッサンみてえな声」
「まだギリギリ20代だから、おっさんはやめてくれ……」
「へいへい。で、オニーサンはどうしたワケ」
「大したことではないんだが、寒くなってきたなと思ってね」
「確かに風とかひんやりしてきたよなァ」
「私は寒いのが苦手だから、これからの時期はつらいものがあるよ」
「ふーん? 今も寒いのか?」
「寒い。なんでここの喫煙所には暖房がないんだ?」
「いや俺に訊かれても」
「はぁ……冷える」
「そんなにかよ。……んー、じゃあ俺があっためてやろっかァ」
「えっ。……ちなみにどうやって」
「まず煙草を消してもらう」
「あ、あぁ。……はい」
「ん。で、こう……こんな感じで」
「!」
「どうよ、俺体温高えからあったかいだろォ」
「これは……温かいし、なんだか落ち着く。癒されるようだよ」
「……俺のハグで癒されるとか、もしかして結構疲れてんじゃね?」
「そんなことはないと思うが」
「でもオルカから聞いたぜ。最近まで新入りの面倒見てたらしいじゃん」
「あぁ。だがそれはいつものことだし、疲れるほどではないさ」
「自分で気が付いてねえだけかもよォ? じゃあもっと癒してやろっかァ」
「もっと?」
「もっと! ……よーしよし。お疲れ様、ジョン」
「……っ!」
「いい子、いい子~」
「……」
「……どう? 癒されたァ?」
「……あぁ……ものすごく癒された……」
「そりゃよかった!」
「……も、」
「も?」
「もうしばらく、続けてもらっても……」
「……しゃあねえなァ、腹一杯になるまで甘やかしてやんよ!」
「なんだそのオッサンみてえな声」
「まだギリギリ20代だから、おっさんはやめてくれ……」
「へいへい。で、オニーサンはどうしたワケ」
「大したことではないんだが、寒くなってきたなと思ってね」
「確かに風とかひんやりしてきたよなァ」
「私は寒いのが苦手だから、これからの時期はつらいものがあるよ」
「ふーん? 今も寒いのか?」
「寒い。なんでここの喫煙所には暖房がないんだ?」
「いや俺に訊かれても」
「はぁ……冷える」
「そんなにかよ。……んー、じゃあ俺があっためてやろっかァ」
「えっ。……ちなみにどうやって」
「まず煙草を消してもらう」
「あ、あぁ。……はい」
「ん。で、こう……こんな感じで」
「!」
「どうよ、俺体温高えからあったかいだろォ」
「これは……温かいし、なんだか落ち着く。癒されるようだよ」
「……俺のハグで癒されるとか、もしかして結構疲れてんじゃね?」
「そんなことはないと思うが」
「でもオルカから聞いたぜ。最近まで新入りの面倒見てたらしいじゃん」
「あぁ。だがそれはいつものことだし、疲れるほどではないさ」
「自分で気が付いてねえだけかもよォ? じゃあもっと癒してやろっかァ」
「もっと?」
「もっと! ……よーしよし。お疲れ様、ジョン」
「……っ!」
「いい子、いい子~」
「……」
「……どう? 癒されたァ?」
「……あぁ……ものすごく癒された……」
「そりゃよかった!」
「……も、」
「も?」
「もうしばらく、続けてもらっても……」
「……しゃあねえなァ、腹一杯になるまで甘やかしてやんよ!」
「アンタまた新入りの面倒見てやってるらしいな」
「見てやってると言うか、ティブロン少佐に任されたんでね」
「ほーん? オレだったら任されてもやりたくねえな、面倒くせえ」
「はは、よく言うよ。何だかんだ言ってちゃんと世話してやるくせに」
「放っといたら放っといたでまた面倒くせえことになりそうだから、仕方なくだ」
「そういう所が面倒見がよさそうに見えるんだろうよ」
「マジかよ。次からは放っといてみるか」
「できるとは思わないが……しかし頼られてばかりと言うのも疲れるね」
「そらそうだろ。たまには頼ってみりゃあいいんじゃねえか」
「そうだな……私は本当は甘えたい方なんだ」
「いきなり何のカミングアウトだよ」
「甘やかされたいんだよ」
「じゃあ甘えりゃいいだろ」
「……オルカ」
「お断りだ」
「すげなく断られてしまったね」
「当たり前だろ面倒くせえ。他当たりな」
「他か……」
「あー、アイツ。フェンネークとか」
「なるほど、フレディか。包容力があって父性に溢れ甘やかし上手……いいかもしれない」
「まぁ傍から見たら、アラサーの野郎二人が甘え甘やかしてるっつー寒気がする絵面になるがな」
「やっぱり考え直すことにするよ……」
「見てやってると言うか、ティブロン少佐に任されたんでね」
「ほーん? オレだったら任されてもやりたくねえな、面倒くせえ」
「はは、よく言うよ。何だかんだ言ってちゃんと世話してやるくせに」
「放っといたら放っといたでまた面倒くせえことになりそうだから、仕方なくだ」
「そういう所が面倒見がよさそうに見えるんだろうよ」
「マジかよ。次からは放っといてみるか」
「できるとは思わないが……しかし頼られてばかりと言うのも疲れるね」
「そらそうだろ。たまには頼ってみりゃあいいんじゃねえか」
「そうだな……私は本当は甘えたい方なんだ」
「いきなり何のカミングアウトだよ」
「甘やかされたいんだよ」
「じゃあ甘えりゃいいだろ」
「……オルカ」
「お断りだ」
「すげなく断られてしまったね」
「当たり前だろ面倒くせえ。他当たりな」
「他か……」
「あー、アイツ。フェンネークとか」
「なるほど、フレディか。包容力があって父性に溢れ甘やかし上手……いいかもしれない」
「まぁ傍から見たら、アラサーの野郎二人が甘え甘やかしてるっつー寒気がする絵面になるがな」
「やっぱり考え直すことにするよ……」
「merci.勇敢なお嬢さん」
綺麗なお姉さんだと思ったその人は、綺麗なお兄さんだった。ふっくらと色付いた唇から流れ出る低い声音は耳に心地よく、私の心を不思議と落ち着かせてくれた。
でも同時にとっても色っぽくもあったので、少しだけドキドキもさせた。
綺麗なお姉さんだと思ったその人は、綺麗なお兄さんだった。ふっくらと色付いた唇から流れ出る低い声音は耳に心地よく、私の心を不思議と落ち着かせてくれた。
でも同時にとっても色っぽくもあったので、少しだけドキドキもさせた。
「我々は『imit』を専門とする駆除屋さんってやつです!」
「この子は所謂、殺人鬼ってやつですね! 何せ『imit』はまるっと人間の姿をしていますから、殺すとなるとやっぱりちょっとしんどいでしょう? だから人間を殺しても罪悪感を抱かないようなクズ……じゃなかった、殺人鬼を雇用しているのです!」
「あ、ウチで雇われているスタッフが全員殺人鬼ってわけではないですよ! もちろん、私も殺人鬼などではありません!」
「なんだかエリシャも貴方に懐いているようですし監視も楽な仕事じゃないですし、この際ですからお任せしちゃっていいですか? あ、すでに上からの許可は下りていますのでご安心を!」
「そうそう、これを渡しておかなくてはなりませんね! これはエリシャに埋め込まれているチップのリモコンです! オイタをしようとしたらポチッと押してお仕置きしちゃってください!」
「ではその子のことはよろしく頼みましたので! くれぐれも殺人事件など起こさせないように気を付けてくださいね☆」
やたら早口で捲し立ててくる小柄な女と、対照的に一言も話すことなく無表情で仁王立ちしているだけの男が、もう用はないとばかりに去っていくのを唖然と見送る。
なんだかとても面倒くさいものを押し付けられてしまったような……。
ちらりと斜め下に視線を落とせばエリシャは俺のことを見ていたようで、ばっちりと目が合ってしまった。纏まらない思考を持て余したままとりあえず会話を試みる。
「あー……エリシャっつったか、おまえはそれでいいのか?」
「いいよ。……そういえばエリシャ、あなたの名前知らない」
「リュディガー・ウルフだ。まァ、好きに呼びな」
「わかった。……よろしく、ルディ」
「あの人間の崩れたような悍ましい姿のクズですら、子を生すことができるというのに」
――これではどちらが、出来損ないか。
そう吐き捨てて嗤う男を、何とも言えぬ感情でただ黙って見つめた。
――これではどちらが、出来損ないか。
そう吐き捨てて嗤う男を、何とも言えぬ感情でただ黙って見つめた。